日経BP社 日経ドラッグインフォメーション 2005年2月23日号
日経BP社 日経ドラッグインフォメーション 2005年2月23日号
「処方せん薬」指定の拍子抜け ある薬局の零売用薬袋(写真左上)と薬局アットマークの荒居氏。厚労省は“非処方せん薬”の販売も、処方せんに基づくことが「原則」と通知したが…。 「一体、厚労省は何がしたかったのか」。「莫大な費用をかけて、結局、品目を見直しただけ」――。今回の薬事法改正の「処方せん医薬品」の指定に対して、そんな声が聞こえてくる。 薬事法改正の裏にアットマーク 改正点は、医療用医薬品の中の「要指示医薬品」を廃止し、新たに「処方せん医薬品」として再分類したこと。また旧薬事法時代の「要指示医薬品」では、医師の指示があれば処方せんがなくても販売、授与できたのが、改正薬事法の「処方せん医薬品」では、処方せんの交付なしに販売、授与できなくなった。さらに違反した者に対して、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金の罰則規定も加えられた。 「処方せん医薬品」の指定は、薬事・食品衛生審議会薬事分科会の了承を得て定められた指定基準(表1)にのっとって行なわれた。指定されたのは、すべての「要指示医薬品」と、これまで“非要指示医薬品”だった医療用医薬品の約半数。これにより、医療用医薬品全体の3分の2程度が「処方せん医薬品」となった(図)。 新たに「処方せん医薬品」に指定された主なものは、注射薬、麻薬製剤のほか、(1)耐性菌を生じやすい又は使用方法が難しいなど、患者の病状や体質などに応じて適切に選択する必要がある抗生物質製剤やホルモン製剤など(2)重篤な副作用等のおそれがある血糖降下剤や降圧剤など(3)本来の目的以外の目的に使用されるおそれがある精神神経用剤など――の三つ。ジゴキシン(商品名:ジゴシンほか)やフェニトイン(商品名:アレビアチンほか)など、劇薬に指定されながらも要指示医薬品でなかったものなどが、見直された形だ(26ページ表2)。 しかしその裏には、ある薬局の存在が少なからず影響している。その薬局とは、新潟市にある薬局アットマーク。同薬局は2001年の開局以来、医療用医薬品のうち“非要指示医薬品”を処方せんなしで販売することを“ウリ”にしてきた。 大々的にチラシを配ったり、大きな看板を掲げて「医者の出す薬が買える」ことを宣伝し、一般紙などでも多く取り上げられてきた薬局アットマーク。それが、地元医師会の目に留まり、話題となり、厚労省が医療用医薬品の薬局での販売に規制をかけるために動いた。つまり今回の改正には「アットマークつぶし」という側面があったのだ。 |
心配された零売の全面禁止 そうなれば薬局アットマークは大ピンチだ。「一時は店を畳まなければならないのではないかと本気で考えた」と薬局アットマークの開設者である荒居英郎氏は当時の心境を語る。 だが実はこれは、薬局アットマークだけの問題ではない。というのも薬局アットマーク以外にも「零売」という形で、医療用医薬品を販売している薬局は存在するからだ。 厚労省は従前から、“非要指示医薬品”といえども医療用医薬品を、医師の指示なく薬局で販売することは好ましくないと指導してきた。しかし法的にはなんら問題はない。 実際に、九州にあるA薬局では長年、限られた品目ではあるが、零売を行なってきた。開設者のA氏は「薬局業務の一部として、OTC薬と同じように販売してきた」と話す。 例えば、医療用医薬品にしかないポンタール(一般名:メフェナム酸)は「ほかの鎮痛剤に比べて、歯痛によく効くと評判」(A氏)。夜中に、歯が痛くてOTC薬では鎮痛効果が得られなかった人に、ポンタールを販売し、喜ばれた経験は多い。 「もちろん次の日に歯医者へ行くように話すが、一晩の痛みを止めてあげられるというのは大きい」とA氏は語る。 別の地域で市薬剤師会会長を務めるB氏も、自身が開設する薬局で数種類の医薬品の零売を行なっている。「OTC薬と同じものがかなり安い値段で提供できるのだから、患者さんのメリットは大きい」(B氏)。例えばB氏の薬局では、OTC薬と全く同じ成分であるバファリン330mg錠(一般名:アスピリン・ダイアルミネート)を、10錠150円と格安で販売している。OTC薬の場合、最小包装が20錠入りなのでそんなに多く必要ないという人にも喜ばれている。 「医療用医薬品が売れなくなると、不便を感じる患者は多いと心配していた」とA氏、B氏は口をそろえる。 |